噛みつき事故防止のために!犬とのふれあいをたくさん持つ

遊んだり手入れをしたりしながら、犬とたくさんふれあって愛情の交流に努め、信頼関係をつくりましょう。体のどこをさわられても、また、どんな姿勢をとらされても、犬が気持ちよく従順に、自分を飼い主に委ねることができるようにしていくのです。

また、このような接触が「楽しく気持ちのよいこと」であることに慣れ親しみ人間を信じ切っている犬は、たとえどんな状況に陥ったとしても、決して人間に牙を向けることがありません。

これは犬による咬みつき事故を防止する上でも、非常に重要なポイントとなることです。今お飼いになっている犬がまだ子犬だという方やこれから子犬を飼おうと考えていらっしゃる方は、特に幸運です。犬の性格形成に大きな影響を与える子犬時代のうちに、そういう観点からも、これからお話しする犬とのふれあいに心がけていただきたいと思います。人間も同じですが、子どものときの環境や経験がその性格形成に大きな影響を与えるのです。

具体的な方法をご説明しましょう。

犬を床に寝かせて脇腹をなでたり、あおむけに転がして動けないように抑えつけてみたり、耳やしっぽ、足をさわったりと、なんでもやって慣れさせていってみてください。犬のおなかをかかえて足を床から離したり、犬の後ろから抱きしめて身動きできないようにしたりということも、ぜひやってみてください。



体に触られることに慣らせることで、しつけやすくなる

ただし、犬の様子を見ながら、犬が怒らないように十分に気をつけて少しずつやっていくということを、決して忘れないでください。やりすぎは禁物。愛情を込めてやさしく愛撫する感じで犬をさわってみましょう。「大好きよ! 大好きよ!」という気持ちで、そしてその気持ちが犬に伝わるように心がけながらやることが大きな効果をもたらせます。日本人は愛情表現が苦手だという説もありますが、犬に対しては大げさなくらい精一杯の愛情表現をしてあげましょう。

何気ないことのようですが、こういうことを通じて、犬が人間の手に慣れるとともに、「飼い主に何があろうと従わなくてはならない」ということを“身をもって覚える”ことができるのです。

シャンプーやブラッシング、歯磨き、耳そうじなども、犬の健康管理という面に加えて、今述べたのと同様の効果があります。犬が気持ちよく自然にそういうことに慣れていくように、ゆっくりとやさしく愛情のこもった態度と気持ちで臨んでみましょう。

中でも歯磨きは、犬に口をあけさせて、人が手を触れたり入れたりして歯をいじるということに犬が自然に慣れるので、これも咬みつき事故防止に大いに役立ちます。犬のほうで「人間の手には決して歯を立ててはいけないのだ」ということを学んでくれるのです。

おとなしく歯磨きをしてもらっているときは「いい子ね」などと話しかけてほめてあげてください。反対に、ちょっとでも犬が口を閉じようとして歯が手にあたったりしたら、大げさに「痛い! いけない」と叱り、「絶対に人間には歯をあててはいけないのだ」ということを犬に覚えさせてください。

なお、抵抗なく歯ブラシに慣れさせるためには、実際に使い始める前に歯ブラシを犬のおもちゃにさせておくとよいようです。

前述のように、犬を怒らせないように、犬が気持ちよく身を任せるようにしていくということが基本です。しかし、体をいじられている間に、万が一犬が怒ってしまったときには、即座に「いけない!」と強く叱ってください。同時に大きな物音をたてるなどして、犬をいっそうびっくりさせることができたらもっといいと思います。

注意しなくてはならないのは、犬が怒ったところで、たとえばラバーブラシによるブラッシング(これは静電気を嫌がって怒る犬がいたりするわけですが)など、そのときにしていたことをやめてしまわないということです。「ごめんごめん、悪かったね」などと謝ることももってのほか。犬が「自分が怒れば簡単にやめさせられる」「自分のほうが強いんだ」と認識してしまい、言うことをいかない問題犬になってしまいやすいのです。

たとえ犬が怒ってしまっても、「いけない!」と強く叱られ、それと同時に大きな音が炸裂したなら、ほんのしばらくの間、空白状態が生じるはずです。そのとき、犬がはっと気づいて態度を改めたなら、何もなかったかのように機嫌良く犬に話しかけながら作業を続けたらいいのです。ただし、怒った瞬間に咬みつく傾向のある犬に対しては、最初から犬の歯が食い込まないタイプの手袋をつけておいたほうが安全です。

あるいは、強く叱った上で、30分くらい犬を無視し続けるという方法をとってもいいでしょう。これは、目も合わせないという完全無視です。犬は群れの中でないと生きていけないので、自分が悪いことをしたことが原因でリーダーに無視されると、その後はリーダーが嫌がることやリーダーを怒らせるようなことをしなくなるのです。もちろん、ここでは飼い主さんを指して「リーダー」と言っています。

なお、体罰はいかなることがあっても用いないでください。体罰は効果が弱いばかりか、飼い主さんと犬との関係を悪化させてしまったり、犬の性格をゆがめてしまったりという弊害が多いからです。犬に対しては、ほめたりごほうびをあげたりする、明るいプラス思考のしつけをしていきましょう。

さて、次の段階では、飼い主さんだけでなく、家族や友人にも犬の体をさわってもらうということを加えてみましょう。さまざまな人と手に犬を慣れさせておくのです。

これは、飼い主さんの家族や友人に対しても従順でなければいけないことを覚えさせるという目的もありますが、犬の社会化を促すという意味でもとても重要なことです。こういう基礎ができているかいないかによって、無駄吠えや咬みつきをなくすためのしつけや、知らない人に接するときのマナーのしつけのしやすさが大きく違ってくるのです。

犬が慣れている飼い主さん以外の人がさわるということも、子犬に対してでしたら難なくできることです。しかし、成犬となってしまっていると-その犬の生育歴や性格にもよりますが-難しい場合があります。そのようなときは犬の様子を見ながら、その人にそばにいるだけにしてもらうところから、犬に会うたびにおやつをあげてもらうなどの段階を経て、犬が「この人が来るといいことがある」という好印象を持つようにしていきます。「犬にさわってもらうのは最後の最後」と考えて慎重に進めていきましょう。

特に、子犬時代に、家族以外の子どもにさわってもらう機会を多く設けておくと、子どもに慣れさせることができるので、ぜひやってみてください。

子どもというものは何をするかわからないし、犬の嫌がる接し方をすることも多いので、子ども嫌いな犬が結構います。でも、それは問題です。いきなり手を出したり顔をのぞき込んだりした子どもに驚いた犬が、反射的に咬んでしまうケースが多いのですが、犬を子どもに慣らして子ども好きにしておくと、突発的な咬みつき事故の可能性を低くすることができます。

もちろん、獣医さんやトリマーさんの手にも慣れさせておきましょう。特に獣医さんについて言うなら、簡単にすむ健康診断の場合もありますが、それ以上に痛みや精神的な不安を伴う病気やケガ、ワクチン接種のときにお世話になる機会が圧倒的に多いと思います。こういうときに獣医さんに敵意を抱いたり怯えたりしていたら、治療もままならないし犬自体も疲弊してしまってかわいそうです。犬は信頼する人には身を任せるので、早くから獣医さんに慣れさせ、良好な関係をつくっておくに限ります。

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